2022年12月26日月曜日

ラバーダム防湿の意味


 ラバーダム防湿は写真のように、クランプという器具とシートを用いて、治療する歯を隔離させる方法です。


こうすることで、

口の中と治療する歯

が隔てられるので


治療する箇所がはっきり明示され、唾液が入ってくることもなく、舌が治療に邪魔になることもない。


受ける側にとっては、口を開けている時間が長くなったりはしますが、治療の精度が上がるので、”結果”として返ってくることが、ラバーダム防湿なしよりも圧倒的に多い。


少なくともデメリットは見当たりません。


虫歯治療の基礎を作ったGV.Black先生の頃から、ラバーダム防湿は実践されています。

ちなみにGV.Black先生が活躍した時代、日本は幕末から明治初期の頃と重なります。


明治時代から存在し、未だに残っている治療の一つのステップである


というだけで、古びた古典的方法という解釈ではなく、時代の洗礼を受けても生き残っている重要なものという解釈の方が正しいと思います。


日本国内のラバーダム使用率が5.4%という資料があります。

100人の歯科医師がいたら、使用しているのが5人で95人は使用していないということになります。


僕はこのデータを懐疑的に見ています。

ラバーダム防湿を使っている歯科医師は100人中5人もいない

というのが肌感覚です。


臨床はじめてから、ラバーダム防湿なしで治療をほとんどやったことがないので、逆に今は”なし”で治療はできなくなりました。


・面倒

・そこにコストをかけない(かけたくない)

・なしでもできる(精度は求めない)

・学生以来やったことがない

これが多くの歯科医師の本音だと思います。


「ラバーダム防湿してるの?えらいねぇ」

上の先生に、こんなことを言われることが結構あります。その先生は決してやってないんでしょう。


そんなにえらいことなのか?と感じているのが、こちら側の本音です。


ラバーダムしたら患者さんが苦しいでしょう?

これも時々聞かれます。確かにそういう方もいるかもしれません。


でも長らく続けてきた、こちらの意見としては

治療中は寝ている方が結構多い

ということ。


苦しかったら治療中寝られませんでしょうね。



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根管治療(エンド)に明け暮れる時期

 


神経(を取る)の治療を根管治療(こんかんちりょう)と言ったり、エンド(Endodonticsの略)と言ったりします。


卒業して、最初に苦労しながら数多く経験するのはエンド

若葉マークの後輩に最初に聞かれるのもエンド


どうも根管治療は自分も含め、誰でも最初に苦労する領域らしいです。

だから、駆け出しの頃はエンドの勉強はかなりやりました。


写真にあるように、

神経のあったところを経由して、根尖(歯の根の先)に感染が波及し、病変を形成する。


もう一度、神経の取った経路をキレイに仕上げ、感染源を除去すれば、写真の右のように病変は縮小して、治癒する。


根管治療はこれを達成するための治療です。

こうやって改めて考えてみると、割と単純な治療ではありますが、最初はなかなか上手に出来ない。


なぜか


・真っ暗の中を盲目的にやる

・失敗するかもしれないという恐怖

・時間に追われる


こういうことは経験を積めば、ある程度克服できるようになります。


しかしながら、根管治療でもっと大事なことは、


・治療中に唾液が入らないようにラバーダム防湿を行う

・神経のあった経路の古い充填物を完全に除去

・歯の根の尖端まで器具を正確に通す

・神経の経路は曲がっているため、曲がった状態のまま形を整える

・キレイに洗浄・消毒を行う

・最後は緊密に充填する


です。


だいたい上手くいかない症例は、これらのどれかが抜けていたり、複数箇所抜けていたり、最悪全部達成できていなかったりします。


逆に達成すると、治療が上手くいく確率がぐっと上がる。


来る日も来る日も根管治療のやり直しをやり続けて、

やり直しが必要なほど、最初に手をつけた時に、いかにいい加減だったか

と思わされます。


長い目で見た時に、最初の一手に時間と労力をかけれらるかどうかで、将来はかなり左右されるでしょう。


そう言えば、

ビックデータによれば

症状はないけれど

根尖病変保有率が高い

というのが日本の現状のようです。


いつか再発する病変をもっている人が多い。

やり直しが多いのもうなずけます。



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虫歯の種2

 先日、学会参加(といってもオンライン参加)して、久しぶりに面白いデータに出会いました。


ビックデータを活用して、日本国内の傾向を広く探り、対策を考える


という動きが加速しているように感じます。


そんな中で、ビックデータを活用した日本国内の虫歯の動向が面白かった。


・幼少期や小児期は虫歯は減った。

・成人は過去と比較して虫歯は減っていない(!)

・高齢者の虫歯は増える(!!)


ビックデータを見ている限り、虫歯はどうも減っていないようです。

特に高齢者で虫歯が増えているのが興味深い。


高齢者で虫歯が多発する症例に時折出会うことは確かです。


その主な原因は【唾液の減少】です。


虫歯の原因菌が酸を作ることによって、歯が溶けだす


これを放置すると虫歯として進行するはずが


【唾液】によって酸を中和(緩衝とも言う)するので


結果として虫歯にならないような防御となっている


ですので、唾液が減るというのは死活問題でもあります。加齢による唾液の減少は、ある程度致し方ありません。


加齢以外で唾液ががつんと減る要因は、【薬剤】でしょう。

ありとあらゆる薬剤を集めたとすると、およそ8割は唾液を減少させると言われています。


高齢になればなるほど、内服薬が増え、内服を継続することが増える

薬剤が増えれば、唾液も減り、虫歯も増える


こんな気がしてなりません。


手術を受けた、抗癌剤治療を受けた、内科的な疾患のコントロールが悪い、新たに内服薬が増えた

などなど


こういうことをきっかけに虫歯の数が増える

かなりこういう場面に出くわします。


この状況下で、間食に甘いものが増えると、虫歯の数の増え方が加速する。


どうもこういうことが考えられなくもないのに、

高齢者にフッ素塗布!!

ブラッシング指導でより丁寧にブラッシングを!!

とやる。



意味がないとは言い切れないですけど、

唾液の量が減らないように

むしろ、唾液の量が適切に増加するように

した方が、予防になるのではないかと考えさせられます。


フッ素塗布もブラッシングも、ずっと前からやっている。

これからの虫歯予防はもっと他のことにフォーカスする必要があると思っています。




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虫歯の種

Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像


学生の頃にガソリンスタンドでアルバイトしていました。
当時はパチンコ屋についで、時給は高かったアルバイトです。

それでも時給は700円

ガソリンスタンド内で給油する場所をドライブウェイと呼びます。

北海道のドライブウェイ、特に冬は堪えます。

窓拭きは ”素手” で行う
現金やカードのやり取りは ”素手” で行う

お客様と軍手でやり取りするなんぞ、以ての外と教育されました。


それはともかく、

手がかじかむほど寒い時
休憩時間に自販機から出てくる温かいコーヒー

には、何度も救われました。

でも落とし穴があった。

温かさが長く続くことと、疲れた身体はどうしても甘いものを欲する

甘くて容量が大きいのは、ロング缶だ(もう見なくなった)。


おそらくロング缶の缶コーヒーには、大量の砂糖が入っている。

来る日も来る日も、飲み続ける。

そして、数年後に歯医者で虫歯治療を受ける。

きっと、この時期に虫歯の種を蒔いてしまっていたのだろうと反省している。




おそらく大多数の人は、高校生くらいから圧倒的に行動範囲が拡がる。

かばんにはいくばくかのお小遣いが入っている。

気軽に買い食いしない方が珍しいでしょう。

そして、安さを求めると、どうしても糖質、特に砂糖がたくさん入って甘いものに走る。


砂糖が大量に身体に入ってくると、一気に血糖値が上がり、空腹感がなくなる。
(満腹感と血糖値はリンクしている)

ますます、きちんと食べなくなる。しかも食費が抑えられる。


こんなことって、子供から大人になる時期に起こりませんか?


幼少期の虫歯が減った。
しかし、大人の虫歯が減っていない。

子供から大人になる時期に、虫歯の種を蒔いている。



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ポテチとコーラ

 

トンガタプ島の空港

海外での歯科公衆衛生活動

現地に赴いて、ブラッシング指導・フッ素の塗布などの啓蒙活動をする。

いわゆる海外ボランティアというやつです。


日本で言うところの幼稚園や小学校の生徒たちは、本当にスレていなくて

・何事にも素直で

・好奇心旺盛で

・表情が本当に明るく、いつも笑顔

というのが、強く印象に残っています。


(今はどうか定かではありませんが)

歯科医療事情、歯科医療提供体制はお世辞にもよいとは思えません。

まず、歯科医師になるためには大学での学業が必要ですが、歯科大学が国に存在しない。


たいていは隣国または他国(フィジーやオーストラリア、ニュージーランド、アメリカ)の大学に留学し、卒業と同時に免許を取得する。


しかしながら、母国に帰らずに留学先に残って、仕事し、家族に仕送りを送る。

というのが王道のパターンのようで、医療提供者は慢性的に不足するとのことでした。


日本で言うところの厚生労働省でしょうか、公衆衛生に携わっている幹部の方のお話によると、

・昔は虫歯なんかほとんどなかった

・爆発的に増えたのは、海外から食料品を積極的に輸入するようになってから

・虫歯もさることながら、肥満や糖尿病も爆発的に増えた


とのことです。やはり食の変化に呼応している。


そして、


具体的な輸入品目は

「ポテチとコーラ」

との返答。


ただ、ここでポテチとコーラがあたかも万病の源だと勘違いしても仕方がありません。

いかに、砂糖や砂糖の類を無抵抗に口の中に入れることがいかに危険かということという解釈の方が正しいでしょう。

サイズが半端じゃなく大きい


素直に考えると

ポテチとコーラで虫歯が増えたのなら

ポテチとコーラの輸入を止めたらいい

となるはずが、そうもいかない。

一度走り出したものはなかなか止められない。


この状況下で、ブラッシングだ、フッ素だとやる。

本当にこれで虫歯予防ができるのかは、相当な疑問が残ります。


やはり、食生活のコントロールは虫歯の予防には重要であることは間違いないでしょう。


ポテチとコーラは控えている

でも、食パンにソフトクリーム乗せてたべるのが大好き

じゃあ、意味がない・・・。




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虫歯は実は減っていない

 虫歯の予防を考えてみる


【虫歯は減った】


と耳にします。たしかに減った気がする。



現在、虫歯が減ったというからには、多かった時期がある。


高度成長期に砂糖の消費量が増え、特に子供の虫歯が多発したという歴史があります。


それはそうです、砂糖の消費量に比例して虫歯の数が増えるのは万国共通です。



その反省(?)から、砂糖の消費量が減り、砂糖に変わる甘味料が開発され、虫歯は減ったというのもうなずけます。


でも、手放しに喜んでもいいのでしょうか?




先日、学会に参加して「やはりそうか・・・」という発表がありました。



・日本では、子供の虫歯は確かに減っています。


・しかしながら、大人の虫歯は減っていません。


・しかも、高齢者の虫歯はむしろ増加しています。




少し穿った表現になるかもしれませんが、


・子供の虫歯は減ったけど、虫歯になる環境は変わっていない


・虫歯予備軍は相変わらず存在し、大人になってから表面化する


・虫歯になる環境は高齢者ほど悪化する


と解釈してもいいと思います。



ということは、


幼少期から成人へ


成人から高齢者へ


という時期に


何かしらの変化があり、それが原因かもしれないと睨んでいいはずです。



虫歯の大きな原因は砂糖です。


砂糖の消費量に比例して虫歯が増えます。


これは動かない事実です。


現代は、砂糖は形を変えて、液糖(ブドウ糖果糖液糖など)という形でも存在します。



特に飲料は、一気に大量に砂糖を摂取する典型でしょう。


・食事の生活のリズム

・間食の量と頻度

・甘いものや飲料のコントロール


これは幼少期に一番コントロールしやすい。


親がある程度制御できるからです。



さらに、虫歯予防にフッ素の塗布やキシリトールが場合によっては追加される。


幼少期に虫歯が少ないのはうなずけます。



このコントロールが効かなくなるはじめての時期が


高校生・大学生あるいは社会人になる時期ではないでしょうか?



行動範囲が広がり、親元を離れて、実家と全く同じ生活を続けられる人の方が珍しいでしょう。



おそらく、この時期が虫歯が表面化してくる時期だと思います。



親元を離れて、一人の行動が増え


それでも


実家と同じ食生活を送っている人


っていますか?




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2022年12月20日火曜日

目を凝らしても、たぶん見えない


 

神経の治療、神経をとる治療を根管治療と言います。

また、これらをもう一度やり直すときは再根管治療と言います。


神経の治療をし、被せて歯の形になったものの

「噛んだ時の違和感がなくならない」


ということで、担当させてもらいました。

(正確に言うと、他からまわってきたという表現が正しい)


そんなに性能は高くなくても、顕微鏡があるだけで、何かが見えるかもしれない。

この当時、しきりに第4根管のことがよく言われていました。


・神経が通っている管(根管)は3つじゃなくて、4つ目もあるんだよ

・これは肉眼では見つけられないよ


どの講演会でも学会レベルでもよく耳にしました。


担当させてもらった時に、すぐにわかりました。

(たぶん)第4根管を触ってない。


丁寧に前処置をして、治療上除去が必要なところは除去して、


レンズを通して、探っていく。


あった・・・第4根管


予想通り、まったく手つかずの状態。


第4根管は見えない、細い、器具が入らないと随分と苦戦を強いられる。

それでもなんとか仕上げられました。


今は、こんな同じようなケースでも、それに適したマテリアルや器具が増えて、より治療がやりやすく、正確になってきています。


後日談ですが、この治療後にもとの担当にもどりしたが、違和感もなくなり、噛めるようになったと聞きました。


そして、玄関で深々とお礼してお帰りになったのだとか。


アシスタントについてくれた学生さん(今は立派になられています)は、隣で座りながら居眠りしてるし、術者はずっと顕微鏡覗いているし、周りの視線はちょっと痛いし、器具がなさすぎて改造が必要だったし・・・と僕にとっては違う意味で思い出深いケースです。



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顕微鏡との出会い

 卒業したての頃は、とにかくお金がなかった。

生活に支障を来すほどではないにせよ、奨学金がなければ、かなり厳しかったと思う。


臨床実習もやり、国家試験にも合格したものの

実際は見るもの、触るもののすべて新鮮で、学生の頃に勉強したことは、ほんの一部に過ぎないことを痛感する。


セミナーや講演会を聞きに入って、情報を仕入れたいものの潤沢に資金があるわけでもない。


「無料セミナー」

と聞けば、興味のある分野は積極的に参加した。


無料といっても、本当は無料ではなくて、有料なのに定員割れで、満席にするための要員での参加。いわゆる”サクラ”をよくやった。

(とある業者さんが、贔屓にしてくれました。今でも感謝してもしきれません)


この頃すでに、世界や日本のトップランナーは例外なく顕微鏡を使って治療していました。


これからは顕微鏡はマストアイテムだな・・・と感じます。

もう20年近く前の話です。


顕微鏡に出会ってしますと

どうしても、次は使いたくなる


どこかにないか・・・


・・・あった。

外来倉庫の奥底に、埃被った顕微鏡が。


(一応)使用許可をもらって、引っ張り出し、キレイに掃除して、動作確認して・・・

はじめて覗き込む・・・・歯が特大サイズになって見える。


ただし、

・顕微鏡の取り回しが異常に悪い

・見れば見るほど、時の流れを忘れる

・目が悪くなるほど、レンズを通した世界が暗い


それに加えて、

「顕微鏡見ながらの治療で、思ったように手が動かない」


ここでたいていの人は諦める。


すぐに出来るようになるわけがない。

ちょっとずつトレーニングが必要だ。


これが、僕の顕微鏡治療の始まりです。



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2022年12月18日日曜日

拡大鏡がパワーアップする時

MarcinによるPixabayからの画像


僕の使っている拡大鏡は倍率が2.5倍です。

身体の一部になってしまっているので、本当はもっと適した倍率があるかもしれませんが、これはこれで気に入っています。僕にとってはちょうどいい塩梅。


拡大率を上げれば上げるほど

・大きく見えるけど、どんどん視野が狭くなる
・視野が狭くなるほど、暗くなる

どうしても、こういうジレンマがある。


最初はよかった。

肉眼より断然大きく見えるじゃないか!で、よかった。


そしてある時、

「やっぱり暗いわ」

と思いはじめてから、

患部を強力に照らすライトが欲しい

となる。


さっそく拡大鏡のオプションであるライトシステムを購入

25万円也


純正の装着方法に疑問があったので、少し改造して、装着してみた。


理由はこうだ。

・術者は直視より、鏡越しで見ることが多い。
・自分の目線とライトの光線の軸が同軸上にあった方がよい

つまり、自分の目から、あたかも光が出て、患部を照らすように軸を調整したら、

・直視しても明るい
・鏡で見ても明るい

を同時に達成できる。


この変則装着方法が正しいかどうかはわからない。


でも10年以上使っていても、不具合らしい不具合もない。
(あえて言うなら一回だけ断線した、断線の理由は改造ではなく消耗による)


むしろ、この使いかたの方が正解なのでは?とも思えてくる。


ただし、肉眼の見え方との差が多きすぎて、治療の美しさもさることながら、治療のアラもよく目立ってしまう。


「ここの歯石を取り残しているよ」
「ここはもう少しキレイに仕上げようか」


これは決して嫌味でもなんでもない。


でも、これが嫌味に聞こえることもあるようだ。

「人のアラを指摘するなんて、なんてイヤな奴だ」

と、はっきり言われたこともある。


クオリティを担保する努力は、得てしてチームワークに亀裂をもたらすことも残念ながらありそうだ。


それから黙って粛々とやるようになった。



それでも、同業者からルーペとライトの組み合わせはどうや?

って聞かれることがある。

そんな時は

「めっちゃええで」

これだけは返すようにしている。





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ほぼ全ての症例で使う拡大鏡

LouisによるPixabayからの画像

治療用に拡大鏡があります。
ルーペとも言われ、拡大率は2-3倍くらいのものが主流で、拡大率が高いものもあります。


駆け出しの頃に拡大鏡を使っている人はほとんどいませんでした。

その頃から

「拡大視野の方が細かい仕事ができるし、見える」
「今後の臨床に絶対必須のアイテム」

と勝手に思っていました。

卒業と同時に大学院に進学したとはいえ、臨床も並行していたので、拡大鏡は自前で用意する必要がありました。

当時の価格で20万円

大枚叩いて購入。
当時の生活に、この価格は正直きつかった。

誰からも教わることなく、とにかく装着してみる

何を見るにしても、とにかく使ってみるを繰り返した。

駆け出しの若葉マーク付きの歯科医師が、なんかよくわからん拡大鏡を付けているのは、当時はかなり滑稽だったんだろう。

・技術のないお前が、見えるようになっても出来るようにはならない
・格好だけ
・普通に一からはじめたら?
・逆にクオリティ下げるでしょ?

少し上の先生からも、かなり上の先生からも、色々言われましたよ。
パフォーマンスに過ぎない、目立つな、大人しくやっておけと。


それから随分経ちましたが、当時から予想していたことは今でも変わりません。

・見えないより、見えた方がクオリティを出せる
・目指しているクオリティは見えるからこそ達成する
・見えないと目指しているクオリティには到達しない


購入から20年近く経ちましたが、未だ現役で、ほぼ全ての症例で使い続けています。

当時の先輩に会ったら、一つ聞いてみたい

「ルーペはじめました?」



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看板の裏話

Paul BrennanによるPixabayからの画像


ここ1週間本当に寒い。
足元からどんどん冷えてきて、身体の芯が冷えてくるのがわかります。

今日は現地で外観や看板についての現地打ち合わせ
寒いなんて言っていられないし、最近運動不足でもあるので愛車(自転車)で出動

身体は温まるが、足先がやはり冷たい。


看板と検索すると、写真が出てきたので拾い画像を添付しました。

Dentistry=歯科
Painless=痛くない、痛みなし
Extraction=抜歯
Dentures=義歯、入れ歯

ちょっと笑ってしまった。
そう言えば、インドを放浪した時に ”Dental Depot” という看板を出している店を見かけたことがある。中を除くと歯科医院っぽいけど、そうでもない雰囲気。

聞けば、Dental Depotとは歯を装飾・美術品として加工するところだそうです。

人の歯も象牙のような装飾品になるらしい・・・


それはともかく、看板はあまり派手にする気はありません。
あくまでシンプル、中身で勝負

良い感じに仕上がりそうな予感がします。



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2022年12月17日土曜日

急ぐことと、ゆっくりすることの間くらいがちょうどよい


工事現場で作業着を着て、安全帯をつけて、ヘルメットを被って、安全第一に努めていても、ケガは時としておこる。


建設現場の足場のパーツが不幸にして顔面に直撃


脳の損傷や顔面の変形など一生涯に残る障害がなかったのは不幸中の幸いか。


顔のキズや腫れが収まってくるまで、どうしても歯の治療は後回しになりがち。


そして、歯の治療だけは、いつまでも待たせられない、後回しにもできない、時間に追われるということがよく起こります。


時間がないのはわかる。
でも最高じゃなくても、いい加減な状態では帰せないんです。

じっくり取り組めなくても譲れないところだけは譲らずに

・虫歯の部分は完全除去
・最低限、形態だけは妥協せずに
・色は単色しか選択できず

でも、これくらいに仕上げることができてよかった。


これ以上、急ぐともうクオリティを担保することすら難しくなる。

専門家である以上、クオリティの高いものを速く提供できて当たり前とも思うが、

「良い結果により早く至るためにはゆっくり行くのが良い」
「歩みが遅すぎても求める結果は得られない」

との兼合いもある。

やはり歯科の治療は

「ゆっくり急げ」

が正解だと思う。Festina lente !!




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職人さんの匙加減

 昨日、現場にお邪魔して職人さんに差し入れをお持ちしつつ、


ちょっとだけ雑談していました。


・設計図面と現場の微妙なサイズの違い

・設計側の意図と現場での、ちょっとした変更点

・もっとこうした方がよさそうというアイデア


こういうことの連続で成り立っているんだなと実感します。


こういった微調整と戦いながら、仕事しているのが言葉の端々から伝わってくる。


自分の仕事も同じ

似たようなケースはあっても、一つとして同じものはない。

基本はあっても、実際は応用の連続。


そういえば尊敬する大先生もおっしゃっていた。

「臨床は応用の連続!」


たしかにその通り。


その応用の連続は、患者さんにはなかなか伝わらない。

伝えたところで・・・とも思う。


ちょっとした匙加減をいちいち指図されると仕事にならない。

術者に委ねて欲しいところだ。


そう感じている以上、現場にはいちいち指図はしないし、できない。

お任せする領域であり、お任せするしかない。


でも、今日会話できて

この職人さんが担当してくれて


よかった


という感情しか残っていない。


これからも何を言われても、

何を報告されても、


全幅の信頼をもって

「よろしく」

と言おうと思う。




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2022年12月14日水曜日

外傷の症例が診たい


  歯の保存治療(虫歯、神経、歯周炎)に長く携わっていると、虫歯だけ・神経の処置だけ・歯周炎の処置だけという単独な場合と2つ以上絡むケースは当然あります。


 審美的に仕上げるダイレクトレストレーションと神経のケア(エンド)がいつも以上に、慎重に、丁寧にやらなければならないのが【外傷】かなと思います。


 外傷というのが物理的な力による損傷と定義すると、転倒する、何かに衝突する、何かが衝突してくる・・・など様々ありますが、自分の身に降りかかるのは避けたいですし、外傷がおこれとも願っていません。


 でも、一職業人として

外傷の症例が診たい・・・

外傷の症例をやりたい・・・・

外傷の歯をキレイに仕上げたい・・・


と願えば出会うものです。

(決して不幸を望んでいるわけではありません)


 野球をしていて、素振りしたバットが上顎前歯にコツンと当ったようです。

残念ながら、歯が一部欠けて、神経がむき出しになり出血していました。


 ここでたいていの場合は

「神経とりましょう」

となる。


 このケースだと、若年者であるし、歯の打撲が疑われましたけど、歯が欠けてから、まだ時間が経過していないということで、「神経は保存できる」と判断しました。

ラバーダム防湿をし、患部を徹底的に洗浄や消毒を施し、神経がむき出しになっているところに特別なセメントを乗せて保護をし、最後は審美的に歯を作っていく


見た目はほぼわからないレベルになりました。


そして、打撲で歯根の尖端がなんとなくボヤーッとしていましたが、後日それも解消され健全な神経として保存でき、歯の感覚も以前同様になります。


歯の神経はとらなければならない状況だととるべきですが、


残して機能させられる状況なら、将来的なことも考えて

【絶対に保存した方がいい】

ことは間違いないです。




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アマルガムの下に虫歯少し


  アマルガムというのは水銀(無機水銀)を含み、歯にボソボソの粉状のものを少しずつ詰めていきながら、固めるという充填方法です。

公害でも問題になるのは有機水銀なので、全く同じかと言えば、違いますが、水銀は水銀。

しかも、取り扱いが面倒で、万が一こぼした時はやっかいです。


 いろいろな諸事情があり、現在アマルガム充填をしているところはほぼないでしょう。

 僕も実際にやったことがあるのは1回だけです。

 見た目はご覧のように、【銀の詰め物】です。

 アマルガム充填で思い出されるのは、実は「虫歯の再発が少ない材料」ということです。

 最近はアマルガム充填がとれたら、歯と同じような色の充填物に変えるのが主流でしょう。とれていなくても、あえて削り取って置き換えることもあります。

 そこでよく観察してみると、アマルガムがとれても、アマルガムをあえて削り取っても、そこには虫歯らしい虫歯がないってことがよくあります。

 本来、材料に求められるのは見た目もさることながら、耐久性や再発しないような性能が求められます。

見た目を除けば、アマルガムは材料として、かなり優秀でしょう。
(適当に詰めた材料の方がよほど虫歯が再発しやすい・・・・)


 削りとってしまえば、また銀色にするのもナンセンスです。
見た目も耐久性も再発予防も一度に達成できるように、きっちり充填していきます。

 接着材がもっとも嫌うのは、水分や湿気です。
それを達成するのがラバーダム防湿。僕は免許とってから、ラバーダム防湿なしで充填したケースがほとんどないので、やらない方が落ち着かない。

 材料の特性を知れば知るほど、ラバーダムなしで充填するのは、ちょっと恐ろしい。

 ところで、鏡に向かって息を吹きかけると曇ります。

呼吸によって口の中は常に湿度の高い空気が入れ替わっています。

〈曇った鏡に接着剤〉

きちんと接着させようと思うと、やはり水分は邪魔以外のなにものでもない。



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2022年12月13日火曜日

熱意しかなくて、気合で乗り切った

 


最近は、事務的なというかホームページの編集をしているので、籠もってパソコンの前でパチパチとタイピングしていることが多いです。


ホームページにも割を制約があるものの、写真素材が豊富な方が見る方にインパクトを与えられるかも。


ということで、昔の臨床写真を掘り出しては眺めているわけです。


この写真の子は大学生。

(たしか)飲み会の最中に酔っ払って転倒したとか、誰かに殴られたとか。


こういった外傷の症例はいつも術者泣かせです。

・強い力がかかっているため打撲のケア

・歯の神経が傷んでいないか

・失われた歯の部分を何で補うのか

と外傷の症例は色々考えさせられます。


まだ、キャリアは浅かったですが、歯に近い色の材料や歯の接着材の研究をしていた自負もあったので、


材料のポテンシャルを最大限に発揮して

1早くて

2キレイ

3痛みのない

治療ができないものか模索していました。


今はもっと材料やマテリアルが進化して、よりキレイでわかりにくくすることが可能です。


この当時は(今から約15年前)


材料の色が限定される

キレイに形を整えるマテリアルがない

そして、自分には熱意はあれど技術がない


それにしても、頑張ってここまでやったなぁと思い出されるケースでした。




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2022年12月12日月曜日

チャレンジした甲斐があった

 


なんでこうなったのか?

どうやって改善するのか?

どこまで改善できるのか?


 改善する方法論は基本とテクニックがあればできます。


それよりも僕は、それが起こったエピソードまで考えてしまう。

そして、できることならチャレンジしたいし、チャレンジさせてもらいたい。


このケースは今でも時々思い出されます。


実はこの方は全盲です。


全盲が故に転倒や何かにぶつかる、ぶつけられることが日々の生活で起こりやすい。


こんな酷い変色が起こったのはこうです。

・顔面強打し、強く歯を打った

・歯の中の神経(歯髄)が損傷し、神経を取る処置(根管治療)をうけた

・根管治療の過程で、神経組織や血液成分が歯の中に残った

・時間と共に変色

こんな流れです。


もしもっと正確にキレイに精密に無菌的に根管治療を受けていたら・・・という前提はここでは置きます。


お母様が全盲であるから、本人は変色に気が付かないし、気がついても気にはしていない。


でも見た目に変色が酷いのでなんとかしたいと常々感じていたようでした。


そこで近所の歯科医院に相談したところ

・削ってかぶせるしかない

・キレイな歯を入れたければ自費(セラミック)で

との提案を受けたようです。


がっつり削ってやるほどのことかと思いつつ、別の方法を探していたところ、たまたまご縁があり、僕に出会いました。


最初に見て即決

ウォーキングブリーチで


その結果がこの写真です。


セラミックにすることだけが自由診療じゃない。

材料変えるだけは自由診療じゃない

プロセスまでしっかり考えて、縛りのなり治療方法や材料選択

そして、時間をとって、そこに熱意と情熱を注げるか


これが自由診療のあり方かなぁといつも感じながら仕事しています。




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キレイに仕上がる前の大事なエピソード

 


 医院のホームページってたいていの医院は持っていると思いますが、姿形は様々でめちゃくちゃキレイに仕上げているところもあれば、以前からまったく変わっていないところもある。


 ホームページは医院の顔だから大事と思いつつ、めちゃくちゃキレイだけど中身がなかった伝わるものも伝わらない。それとホームページがキレイだから”決め手”になったということってほとんどない気がします。(自分だけかな)


 ということで、表現者は自分だけであるということは確かなので、ホームページは自分で運用できる形にしておこうと思います。


 さて、掲載した写真は治療の写真です。いわゆるビフォアアフター。ウォーキングブリーチというテクニックで、外傷や歯髄(歯の神経)壊死、根管治療(神経の除去)の後に歯の内部から変色が起こり、灰色や暗色に変化したのを改善する漂白法です。


 ホームページには掲載する予定ですが、ここでは

”ほら、こんなにキレイになるでしょ”

ということではなく、このケースがここまで到達するまでのエピソードを紹介しようと思います。


実は、変色しているので、変色を改善してキレイにしたい というのは主訴ではありませんでした。


当初、左側の鼻と唇の間くらいが腫れてきました。(専門的な表現だと鼻翼下部)

鼻の近くだから・・・ということで耳鼻科を受診しましたが、鼻には原因となるものがなかったため、歯も見てもらって・・・・ということで歯科医院を紹介されたそうです。

その結果、歯が原因じゃないですね・・・との結論。

もう一度耳鼻科に戻されて、原因もはっきりしないけど、腫れているのは現実起こっていることなので手術で摘出しましょう・・・みたいな話にも展開されていたようです。


CTも撮り、MRIも撮り、結局原因がわからない。


そこで耳鼻科の先生が機転を利かせて、もう一回違う歯医者にかかってみて とのことで僕のところに来てくれました。

僕の結論は 原因は歯であり、根尖病変だ となりました。


CTもMRIも撮って、歯科でレントゲンも撮って何故診断できないのか・・・・

あまり大きな声で言えないですけど、

”せっかく撮ったレントゲンをじっくり見ていない(術者が)”

じゃないでしょうか。


原因がわかれば、後は粛々と治療するだけです。


写真の変色している歯を、もう一度根管治療で感染源を除去して、しっかり消毒して、なるべく無菌化を目指し、再感染しないようにきっちり封鎖する。


2回目の来院で、本人がびっくりするくらい ボコっと腫れていたところは消えました。触れば少しシコリみたいなものはありましたが、これもいずれ消えます。

ちょうど変色が一本だけでウォーキングブリーチでかなり変色は改善できるケースだったので、根管治療の後に漂泊開始。これも3回の漂泊で隣の歯と同じくらいに改善されました。


もちろんご本人も大満足


ただ、キレイに審美的に仕上げていくことも大事なんですけど、


手術して腫れている部分を摘出して、病理解剖して 癌でも腫瘍でもないし、なんだろうね、これ?となり、原因が違うところにあるので手術の後にまた晴れる・・・みたいにならなかった方がよほど良かったのかなと思える症例でした。


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