2022年8月24日水曜日

同業者には否定され、他業種に応援される不思議

 かねてから自由診療で自分のできることを表現したり実践したいと考えてきました。


保険診療で妥協せずに実践することは物理的には可能だけれども、全てできるかというと絶対に不可能だからです。


保険診療の良いところは当然認めているわけですが、もうちょっとこうしたい、もうちょっとこうしておけばよかったということがどうしても付きまといます。


全国一律の料金で、いつでもどこでも受けられる診療が保険診療の良さではありますが、卒業してからかれこれ数十件の勤務先を経験したり、医院見学をして感じることは

”均一どころか同じようなところは一つもない”

というのが現状だと思います。


実践する人が違う、これまで学んできたことやプロセスが違う、地域が違う、設備や材料に対する考えや投資の仕方が違う・・・と挙げればきりがありません。一つとして同じところはないというのが僕の中の結論です。


保険診療は必ず決められたルールに乗っ取らなければいけないものです。そのルールが治療をうける人(患者)にとって、良いものを提供するのであれば文句はないはずですが、実際はそうでもありません。


その良いかどうかわからないルールに従わざるを得ないという縛りや概念を外して、

・もっとこうあればいいのに

・もっとこういったことを提供できたらいいのに

ということを体現していこうと思う、当然できない壁にぶち当たる。


”自由診療でやりたい”


と同業者に打ち明けたところ、大抵は「それって大丈夫?」「普通にやれば?」「なんでそんなことをやる必要があるの?」という答えが返ってくる。


不思議なことに、他業種の方に打ち明けると「そういうのあったらいいよね。」「それいいじゃない。」「あーそういうことやってくれるところないよねぇ。」などとポジティブな答えしか返ってこない。


保険のルールが実態に即したルールでないとも言えるかもしれない。


そんな中、自由診療だけをやっている同業者の言葉は、僕の気持ちにはすごく響きます。


西日暮里のネクスト・デンタル 櫻井先生の言葉を借りると

”保険診療は制限診療であり、制約診療。医療は本来、患者一人一人に合わせて自由であるべき”

です。心に刺さりました。


また、新潟県長岡市の吉岡先生や広島県福山市の東先生ともお話する機会を頂戴しましたが、とにかく真摯に向き合うということに終始していると感じました。


制限や制約がないから真摯に向き合えるとも言いかえられます。


自由診療でやりたいという気落ちを後押ししてくれるのは、他業種であり、自由診療だけで実践している同業者だけかもしれません。

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虫歯の治療で絶対に手を抜けないこと

 高校時代に勉強を一時期怠っていたので、特に高校三年生の時は猛烈に追い込んで勉強していました。当時、北海道拓殖銀行(都市銀行)が破産するとかしないとかで、結局は破産したわけですけど、その煽りを受けて父の会社が倒産しました。


そのような社会情勢や父を見て、現状をよく把握できないけれども、それでもなんとなく

”手に職を付ける”

ということの強さを感じたのかもしれません。


そこで選んだのが歯科医師への道の第一歩でした。ですので、最初から歯医者になりたいと強く願っていたわけではありません。そのかわり、割とフラットな目線で歯科界を眺めているということは今でも続いています。


大学卒業時は概ね何を専攻していくのか?ということが話題に挙がります。その時期は正直迷いました。なにせ最初から強く歯医者になろうと決意して大学受験したわけではなかったことが大きな理由です。


そこで歯科医師って何をするのか?歯科医師はなにを提供するのか?と一通り再考した結果、

”歯医者って虫歯の治療”

というイメージが頭にあった。それが最初に虫歯治療を専攻した理由です。


当時は、虫歯に罹患(りかん)した歯質(歯の一部)は、細菌に感染しており、感染したところは基本的に削って除去するというのが基本です。これは現在もほぼ変わっていません。その削って除去する歯質をいかに少なくできるのかという概念が跋扈していたような気がします。


そのなるべく少なく除去しつつ、歯に接着させられる材料で、かつ歯の色に近い材料であるコンポジットレジンと接着システムが研究の領域では、大いに隆盛していました。ですので、コンポジットレジンと接着システムに関しては、研究もしていたこともあり知識や技術は豊富です。


これまでも

・感染している歯質は残らず除去して、健全な部分は触らない

・修復材料(いわゆる詰め物)は、良い条件で接着させて長持ちさせる

・歯に近い色に似せて、かつ形も歯のように見せる

ということを追求してきました。


この課題を克服するために必要なことは


まず第一に虫歯がどの範囲にまで及んでいるのかということを視覚的に判断する必要があります。その判断をするのに虫歯の部分は色が染まり、虫歯ではない部分は色が染まらないという判別をするためのう蝕検知液というものを使用しなければなりません。


ちなみにう蝕検知液の生みの親は、僕の臨床の最初の師匠です。ということでう蝕検知液についてはかなり叩き込まれました。


染まった虫歯を除去した後は、いよいよ充填(詰める)です。歯に材料を接着させるという技術は本当に素晴らしいの一言に尽きるのですが、まったく材質の違うものを接着させるということや、口腔内(口の中)の環境は、とにかく湿気や水分がやたらと多い。この水分が接着を大いに妨げてしまうというジレンマと常に戦わなければいけません。


ここで大事なことは、

”接着や充填する時は、きっちり乾燥させた状況で”

ということが理想的な接着には必要だということです。


それを達成するためには、削っている最中に歯の表面に噴霧されるオイルミストとアルコールでしっかり清拭し、ラバーダムを装着して呼気の水分や唾液を排除して、きれいで乾燥した状況を作らなければ理想的な接着は事実上不可能です。


こういった接着システム(接着剤)の開発や試作段階の材料を研究で取り扱っていた経験上、少しでも理想的な状況下で接着させたいという気持ちが強いんですね。逆に言うと、条件が整っていないと雑にやっているという罪悪感の方が心に残ってしまいます。


これまで非常勤で勤務した時を除き、自分で治療の手段や材料を決められる状況下では、接着システムを使った虫歯の治療は100%ラバーダムを装着し、歯の清掃や、基本的な材料の術式やプロトコールを守ってやってきました。


なので、これからも接着させる材料を使った虫歯の治療は100%ラバーダム装着して、歯をきっちり清掃して、理想的な状況下でやりたいです。ちなみにプロトコールを守るだけでも最低30−40分くらいはかかります。


なにかの治療のついでに、虫歯をとって詰めておきましたという治療はせいぜい5−10分くらいしか時間をかけていないはずです。(←これが保険診療の実態)


きっちり実践するためには、やはり時間に軸を置かないと無理ですね。


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2022年8月13日土曜日

人間誰にでも間違いはあるけれど・・・

 大学を卒業して免許を取ってから、いよいよ臨床生活がスタートします。


今考えるとゾッとしますが、最初は右も左もわかっていません。

技術的なことも含めて、自分で勉強したり、先輩の先生に聞いたりするものです。


そんな中で当然、保険診療や保険点数に関する話題がでてきます。


免許とってから19年経ちました(2022年現在)が、恥ずかしながら保険点数のことを全て網羅して理解しているとは到底思えません。複雑なところは複雑すぎて覚える気にもならないからです。


もちろん異常に詳しい方もいらっしゃいます。


”こういう時はこういう算定ができる”


というような類いの話です。

これが適切に行われて、やったことへの正当な治療費(報酬)になるなら、なにも文句はないですし、算定してもいいはずです。


しかしながら、どんな制度にも裏技や抜け道はあるもので、それらに精通して、かつ精力的に行なっている方がいるのも事実です。



人には間違いがおこるのは、ある程度致し方ありません。


自分も過去に間違ったこともあるし、本来算定できるものを算定しなかった(忘れていた)なんてことは探せば山ほどあるでしょう。


その間違いには常に懺悔しなければいけませんが、故意にでっち上げるというのはいかがなものかと過去からずっと思っていました。


例えば、僕が過去に垣間見たものは


・1本の虫歯治療が2本分やったことになっている

→だって、今日これだけだったら点数低いでしょといういいわけ


・やり直しは無償保証の範囲内なのに、隣の歯の治療が進んでいることになっている

→やり直しでコストかかってるんだから、やったことにしないと赤字でしょといういいわけ


・安価な金属を使っているのに、高価な金属を使ったことになっている

→たぶんばれない・・・


など


まあよくこんなことが思い付きますねと言いたくなるほどです。

いわゆる”でっち上げ”というやつです。


僕が算定したものを後日修正されるってこともありました。

これも間違いの訂正ではなく、でっち上げです。


このようなテクニックを知っていて、それを仲間内で情報を共有したりレクチャーしている人って何故か、とても楽しそうなんですね。正直なところ楽しいんでしょう。


僕はこういうことを聞いたり、こういうことをレクチャーされること自体が、昔から嫌いで、露骨に嫌な顔していたと思います。


そんなことに時間を費やすなら、もっと他に建設的なことに時間を使えるでしょうに。



自分の医院は、

そんなことに振り回されない、違うステージでやりたい

という想いがあって自由診療専門でやっていきたいです。



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2022年8月12日金曜日

保険診療に携わって思うこと

国民皆保険ということで、定められた保険料を収めれば全国どこでも一律の治療費で医療を受けることができます。

これは世界を見渡しても、素晴らしい制度であることは間違いありません。

旅先であっても出張先であっても、そこに病院があれば医療を受けられるなんて、本当によくできたシステムです。


 ただし、この健康保険の制度がすべて素晴らしいかというと、私はそうは思いません。


全国一律でどこでも受けられるというのは便利ですが、これを利用するのは不慮の事故に巻き込まれたですとか、急な病気を発症したですとか、食中毒で動けなくなったなど、急を要する時には非常に優れています。

ですが、大抵は自宅や職場や学校周囲の行動範囲で生活しているわけなので、かかるのは近所や行きつけ(かかりつけ)がほとんどでしょう。

 

それと歯医者をどう選んでいいのか?というのは永遠のテーマかのように雑誌やインターネット上ではレビューされています。

全国ほとんどの歯科開業医(もちろん病院も含めて)は、この保険制度を扱って診療行為を行っています。

全国一律の料金で、一定の治療を受けられるという理念は前述の通りですが、場所や設備、歯科医師の技量や経験は千差万別です。一律になるわけがありません。


一律に受けられるはず・・・という考えが、歯科医院選びを難しくしているといっても過言ではないでしょう。そして、他との違いを謳った広告を打つ歯科医院も、そんなに多くはありません。(実際は広告できないような規制があるため)これも歯科医院選びをより一層難しくしています。


ではなぜ、そんなことが起こるのでしょうか。


まず保険診療上、治療の行為は、病名があって、それに対して何をどうするかということに対して、細かく診療点数が決められています。

要するに病気がないと、何も治療費は発生しないのです。

例えば、虫歯の治療費だと、虫歯の箇所を削って詰めるで点数が発生します。

その点数は、使用する材料などによって多少の違いはありますが、ほとんど同じです。


このことから何が起こるかというと、虫歯は削って詰める数が増えるほど、治療費は高くなります。

そして、もう一つ言えることは、虫歯を雑で速くてさっさと終わった方が治療費に対する治療時間が短くなるので実質的な利益が大きくなります。


虫歯を丁寧に時間をかけて、精密に・・・そして詰める材料の性能をいかんなく発揮するためにプロトコールに従って、劣化しないように保管して、なるべくフレッシュな材料を使うってことに注意を払っても、払わなくても治療費は同じです。


現行保険制度では、基本に乗っ取った耐久性のある治療は現実無理なのです。


いやいや、うちはちゃんとやっているという批判は受けるかもしれません。


しかしながら、それに反論はできます。

もし仮に虫歯の治療を懇切丁寧に保険でやったとしましょう。

治療費も一律の値段でやったとしましょう。


その影では、歯科医師が挨拶程度で終わらせて、歯科衛生士やスタッフが、さも歯科医師がやったかのような診療行為が行われていて、そこから十分利益を得られるからやっていけるということは、無視できません。


実際問題、そういったことがないと絶対に経済的には無理なのです。

粗悪で、コストを極力カットした治療を短時間で施すか、丁寧にやっても、どこかで利益を上げられるシステムを動かしているというのが保険制度の現実です。



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自己紹介

 はじめまして!

中田 貴(なかた たかし)と申します。


このブログへのご訪問ありがとうございます。


現在、前職を退職して、非常勤になり勤務時間を減らしつつ、開業に向けて準備中です。


開業までに経緯やこれからやっていきたいこと、実現したいことなどブログに綴っていこうと思っています。


どうぞよろしくお願いします。


まず自己紹介をします。


昭和52年(1977年)に北海道札幌市で生まれ

北海道率札幌南高校を卒業後に、北海道大学歯学部に進学して、歯科医師免許を取得

北海道大学大学院歯学研究科で4年間の研究生活(主に免疫学や材料学)を送り博士号を取得


大学院を終わってから、主に臨床をしています。


大学卒業後に保存修復学を専攻していたので、日本歯科保存学会専門医にもなりました。


これまでの経緯も含めて、少しずつブログに書いていこうと思います。


さて、

タイトルにもあるように自由診療専門の歯科医院を開業する予定です。


なぜ自由診療で開業しようとしているのでしょうか。


自由診療の対局にあるのが、保険診療です。


現状の日本の保険医療制度には、もちろん良い面がたくさんあります。保険料さえ収めれば、全国どこでも誰でも一定のクオリティの医療を受けることができます。当然、歯科の領域も保険診療が一般的でしょう。


これまで自分も保険医となり、保険診療に携わってきたのは言うまでもありません。


安価に一定以上のクオリティで歯科治療を受けられるというメリットは当然ありますが、どんなにクオリティが高くても、逆にどんなにクオリティが低くても窓口負担が同じということに、やはり疑問があります。


自分は大学の時から歯と歯に接着する材料の研究にも携わってきました。

どういう条件で、どんな材料や成分で歯に接着するのか?きちんと接着させるためには口の中で実際にどんなことを行わなければならないのか?などを追求していくと、保険診療という縛りがある以上、理想的な条件で治療を行うことはます不可能です。


歯科医院を経営していく上で治療費としていただく売上があって、はじめて成り立つのは言うまでもありません。


しかしながら、決められた治療費で売上をたてていくとなると、どうしてもたくさんの患者をみたり、たくさんの治療を行わないと成り立ちません。


たくさんの治療台に人が座り、待合にも人が溢れるくらいでないと伸びていかないモデルなのです。


そして、保険診療は基本的に検査をして、病気が見つかって、病名がつけられて、治療する。その治療に対して対価が支払われるという原則の上に成り立ちます。


つまり、何らかの治療行為ありきなのです。

逆に言うと、説明を聞いて、選択をして、納得して治療を受けるという対話の部分に対価はほぼありません。保険診療では、じっくり時間をかけるということは実質不可能で、とにかく数をこなす(業界では”まわす”と表現される)方向にしか向かえません。



基本に忠実で、理想的な条件や状況を作って、クオリティの高いものを提供する


ということに軸足を置いた場合、技術や材料も当然大事なのですが、

僕が一番大事にしたいのは”時間”です。


さっさとできるものを、わざとゆっくりやるというわけではありません。


プロである以上、ゆっくりやっている場合ではないことは十分承知しています。それよりも職人をせかして、いい仕事ができるわけがない。こちらの方が表現としては近いと思います。


僕のこれまでのキャリアを振り返ると、本当に必要なものは何なのか?無駄なものは何なのか?むしろ不要なものや不要なことは何なのか?ということを自然とやってきたように感じます。


余計なことはむしろやらない、必要なことはきっちりやるということで


What is needed?( 何が必要なのか)


という一文の頭文字をとって、医院名をWIN Dental Officeとしました。


これから少しずつ準備が進んでいきますが、自分でもどんなものになるのか楽しみです。


もしよかったら、少しずつブログを更新していきますので、ご高覧いただければ嬉しいです。



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本年の最後の診療を終えて

ウインデンタルオフィスの中田です。 当ブログを読んでいただきありがとうございます。  お陰様で昨日の12月30日で本年の診療を無事終了いたしました。  開設してから1年弱ですが、予想や期待通りではないことの方が圧倒的に多かったです。  しかしながら、嬉しい予想外も多々ありました!...