高校時代に勉強を一時期怠っていたので、特に高校三年生の時は猛烈に追い込んで勉強していました。当時、北海道拓殖銀行(都市銀行)が破産するとかしないとかで、結局は破産したわけですけど、その煽りを受けて父の会社が倒産しました。
そのような社会情勢や父を見て、現状をよく把握できないけれども、それでもなんとなく
”手に職を付ける”
ということの強さを感じたのかもしれません。
そこで選んだのが歯科医師への道の第一歩でした。ですので、最初から歯医者になりたいと強く願っていたわけではありません。そのかわり、割とフラットな目線で歯科界を眺めているということは今でも続いています。
大学卒業時は概ね何を専攻していくのか?ということが話題に挙がります。その時期は正直迷いました。なにせ最初から強く歯医者になろうと決意して大学受験したわけではなかったことが大きな理由です。
そこで歯科医師って何をするのか?歯科医師はなにを提供するのか?と一通り再考した結果、
”歯医者って虫歯の治療”
というイメージが頭にあった。それが最初に虫歯治療を専攻した理由です。
当時は、虫歯に罹患(りかん)した歯質(歯の一部)は、細菌に感染しており、感染したところは基本的に削って除去するというのが基本です。これは現在もほぼ変わっていません。その削って除去する歯質をいかに少なくできるのかという概念が跋扈していたような気がします。
そのなるべく少なく除去しつつ、歯に接着させられる材料で、かつ歯の色に近い材料であるコンポジットレジンと接着システムが研究の領域では、大いに隆盛していました。ですので、コンポジットレジンと接着システムに関しては、研究もしていたこともあり知識や技術は豊富です。
これまでも
・感染している歯質は残らず除去して、健全な部分は触らない
・修復材料(いわゆる詰め物)は、良い条件で接着させて長持ちさせる
・歯に近い色に似せて、かつ形も歯のように見せる
ということを追求してきました。
この課題を克服するために必要なことは
まず第一に虫歯がどの範囲にまで及んでいるのかということを視覚的に判断する必要があります。その判断をするのに虫歯の部分は色が染まり、虫歯ではない部分は色が染まらないという判別をするためのう蝕検知液というものを使用しなければなりません。
ちなみにう蝕検知液の生みの親は、僕の臨床の最初の師匠です。ということでう蝕検知液についてはかなり叩き込まれました。
染まった虫歯を除去した後は、いよいよ充填(詰める)です。歯に材料を接着させるという技術は本当に素晴らしいの一言に尽きるのですが、まったく材質の違うものを接着させるということや、口腔内(口の中)の環境は、とにかく湿気や水分がやたらと多い。この水分が接着を大いに妨げてしまうというジレンマと常に戦わなければいけません。
ここで大事なことは、
”接着や充填する時は、きっちり乾燥させた状況で”
ということが理想的な接着には必要だということです。
それを達成するためには、削っている最中に歯の表面に噴霧されるオイルミストとアルコールでしっかり清拭し、ラバーダムを装着して呼気の水分や唾液を排除して、きれいで乾燥した状況を作らなければ理想的な接着は事実上不可能です。
こういった接着システム(接着剤)の開発や試作段階の材料を研究で取り扱っていた経験上、少しでも理想的な状況下で接着させたいという気持ちが強いんですね。逆に言うと、条件が整っていないと雑にやっているという罪悪感の方が心に残ってしまいます。
これまで非常勤で勤務した時を除き、自分で治療の手段や材料を決められる状況下では、接着システムを使った虫歯の治療は100%ラバーダムを装着し、歯の清掃や、基本的な材料の術式やプロトコールを守ってやってきました。
なので、これからも接着させる材料を使った虫歯の治療は100%ラバーダム装着して、歯をきっちり清掃して、理想的な状況下でやりたいです。ちなみにプロトコールを守るだけでも最低30−40分くらいはかかります。
なにかの治療のついでに、虫歯をとって詰めておきましたという治療はせいぜい5−10分くらいしか時間をかけていないはずです。(←これが保険診療の実態)
きっちり実践するためには、やはり時間に軸を置かないと無理ですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿